『下痢出る苦』


 先日、マンホール・ポンプの点検業務に従事していたときのことです。マンホール・ポンプ、略して「マンポン」。通称「うんこポンプ」と呼ばれる下水用のポンプでありますな。で、午前中の作業を終え、近くの喫茶店でランチを食べることになったんですが、僕は「焼きそば定食」を頼みました。けっこう好きなんですよねぇ、焼きそば定食。そのため、日替わりランチがある店では日替わりランチ、ない店では「焼きそば定食」を頼むのが常なんですが、もちろん日替わりランチが焼きそば定食である場合はそれを頼みますしね。

 で、焼きそば定食。食べているときは別になんともありませんでした。「まあまあぢゃん。」とか思いながら焼きそばとゴハンと味噌汁とデザートの西瓜を食べ終え、オマケに付いてきたアイスコーヒーも飲み終えたところ、ちょっぴり尿意をもよおしてきましたので、トイレに行きました。で、トイレから戻ってしばらくすると、いきなりといった感じで襲ってきたんですよねぇ、下痢の予感が。。。マジ、ちょっとヤバイぃ?という気もしたんですが、なんせさっきトイレに行ったばかりなので、このタイミングでのトイレ再訪は、自ら「うんこである。」ということを告白するようなものであります。「それだけは避けたい。」と、プライドの高い僕としては思うわけです。もし僕がここでウンコをしたことがバレたら、「いなば君は喫茶店でウンコをした。」という話は瞬く間に社内に知れわたることになり、「えんがちょ」されちゃうことは必至。この場はなんとか堪え忍び、現場に戻ったところで「ちょっといい?」とさりげなく場をはずし、そしてどこかのトイレに駆け込もう。そう決意した僕は表面上は爽やかに焼きそば定食の料金を支払ったりして、その店を後にしたのでありました。

 で、現場に到着。もはや「プライド」とか、「男の沽券」とか、「さりげなく」とか言ってる場合ぢゃない!というほど、事態は切迫してまいりました。マジ、かなりヤバイぃ?といった感じになってまいりました。こんなことならさっきの店でウンコをしてくるべきだった。。。と後悔しても、時、既に遅し。あまりに切迫する便意にヤケを起こし、マンホールの中に直接投下したろかい?とまで思ってしまいましたが、いや、どうせ便所まで行って投下したしたところで、最終的にはこのあたりのマンホールに流れ着くわけですしね。しかしマンホール・ポンプというのは往来の真ん中にありまして、さすがの僕もそこまで思い切った行動に踏み切ることは出来ず、「腹が痛ぇ。。。」という趣旨を現場の作業員にそれとなく伝えると、大慌てでクルマに乗り込んで、公園の便所を目指したのでありました。

 さいわい、現場のすぐ近くに「輪中公園」という立派な公園があったんですが、あまりにも立派な公園なので、駐車場から便所まで、ちょっと距離が離れているんですよねぇ。。。この時ほど「肛門括約筋の活躍というのは、いざとなったらこの程度のものなのか?」ということを思い知らされたことはありませんが、いや、早い話が漏れる寸前でありまして。。。マジ、もう駄目かもしんない?というところまで追いつめられたわけでありますが、便所の直前で漏らしちゃうほど、なさけないことはありませんよね。そこで僕は最後の力を振り絞り、いや、力を振り絞ったりしたら、とんでもないことになりますね。そこで僕はカラダ中の力のすべてを一点に集中し、恥も外聞も捨て、後部を手で押さえつつ這々の体で便所に向かったのでありますが、その甲斐あって、すんでのところで何とか無事にその内部に座り込むことに成功したのでありました。いやぁ、マジ、やばかったす。

 とりあえず、出すものだけ出したらスッキリしたんですが、あの急激な下痢症状は何だったんでしょうね?焼きそば定食のソバが古かったんですかね?まったくもって、古いソバと古いサバには気をつけないといけませんなぁ。。。

 「“漏れそうだ!駆け込み赦免、下痢出る苦”、かぁ。。。」

 僕は力なくそう呟くと、キティちゃんの絵があちこちに貼られた便所を後にしたのでありました。

(おしまい♪)



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