『シモの道』

 世の中の森羅万象は全て“陰”と“陽”から成る。…というのは古くから中国に伝わる陰陽説の考え方ですが、「なるほどなぁ。」と思いますよね。確かに世の中には陽気な人もいれば陰気な人もいて、普段は陰気なんだけど、春になって陽気がよくなってくると陽気になる人とか、学生時代までは陽気だったんだけど、大日本インキに就職した途端、陰気になっちゃった人とかもいて、なるほど、世の中は“陰”と“陽”から成っているんだなぁ。。。ということが理解出来るわけでありますが、他にも“陰”と“陽”の組み合わせというのは、いくつか例がありますよね。例えば暦にだって太陽暦と太陰暦がありますし、中国地方にだって山陽と山陰がありますし、電池にも陽極と陰極がありますし、写真にだって陽画と陰画というのがございます。陰画と言うとどうしても陰毛図風のモノを想像してしまいますが、これは何もそのような下仁田系のものではなく、わかりやすく言えば“ポジ(陽画)”と“ネガ(陰画)”ということなんですけどね。ポジティブ、ネガティブという時の、あの“ポジ”と“ネガ”でありますな。

 このポジティブとかネガティブというのは、おじさんにとっては鬼門とも言える言葉でありまして、例えば「ジェネレーション・ギャップ」のことをどうしても「ゼネレーション・ギャップ」と言ってしまうおじさんは、まず間違いなく「ネガティブ」を正しく発音できませんね。どうしても「ネガチブ」と言ってしまいます。どだい、おじさんに「ェ」とか「ィ」を正しく発音しろというのが無理な話でありまして、だいたい「ェ」とか「ィ」なんていう字は五十音表にも載ってませんもんね。だからどうしてもヤングな部下に対し、「だいたいね、チミの考え方というのはネガチブなんだよぉ。」と説教することになるわけですが、これでは説教された部下のほうとしても、「“根が恥部”って、そりゃアンタやん!」と反感を覚えてしまいます。

・部下の掌握にはまず「ェ」と「ィ」の正しい発音から

というのを合言葉に、日々精進に励みましょう。“アイスティー”を“アイステー”と言ってるうちは、まず駄目です。

 で、世の中の森羅万象は全て“陰”と“陽”から成るという「陰陽説」と、何だか詳しいことはよくわかりませんが、とにかく「五行説」と呼ばれるものがありまして、その2つが合体して、いわゆる「陰陽五行説」と呼ばれる思想が誕生したわけでありますが、「いんようごぎょう説」と聞いて、「あ、知ってる知ってる。おしっこを飲むなら、一升瓶の半分ぐらいがイイっていう説でしょ?…って、そりゃ“飲尿五合説”ってか。がははは。」とか言ってるようでは到底、部下(特にOL)のハートをキャッチすることは出来ません。何がよくないって、まず最後の「がははは。」がよくないし、「…ってか。」という言い回しもよくないし、それに何より、言ってることがあまりにも下らなさ過ぎるのが致命的ですよね。これではオフ会の話が盛り上がらなかったり、掲示板がカンコったりしてても、やむを得ないと言わざるを得ませんが、で、僕が言いたいことは何かというと、世の中の森羅万象を“陰”と“陽”に分ける以外に、“上”と“下”に分けるという方法もあるのではないか?ということを、ふと思い付いた次第でありまして。

 「天は人の上に人を作らず、人の下に人を作らず。」と言ったのは福沢諭吉ではなかったかと思いますが、ンなことが嘘八百であることは幼稚園の燃焼組…って、燃えてどうする。幼稚園の年少組の幼児にだってわかりますよね。天のことはどうだか知りませんが、少なくとも天丼には“上”と“下”がありますもんね。いや、“下”のほうは表向きは“並”ということになっていますが、ということは“上”と“下”ぢゃなくて、“上”と“並”ぢゃないか。…と細かいことを言う人がいるかも知れませんので他の例を探してみることにしますが、例えば、えーと…、そうそう。裃(かみしも)には“上”と“下”がありますよね。これはもう、裃という漢字自身に“上”と“下”という字が入っておりますので、先ほどの細かいことを言う人も、さすがに文句の付けようがないと思いますが、道にだって上り道と下り道がありますよね。で、上り道と下り道の境には峠(とうげ)というのがあって、ここにも裃と同様、“上”と“下”の字が含まれているわけであります。“上”と“下”の字が含まれているだけではなく、釜飯だって売っております。で、“上”と“下”があるのは、なにも人が歩く道だけではなく、水の流れる道にだって“上”と“下”とがありまして。

 ということで、今日は某所の浄化センターというところで仕事をしていたんですが、これは“上の水の道”ではなくて“シモの道”、すなわち下水道の施設なんですよね。で、整備していたポンプには「汚水ポンプ」という名称が付けられておりましたので、恐らく「きたねぇ水が流れているんだろうなぁ。。。」ということは認識していたんですが、いざ、ポンプの中の水を排出してみると、あたり一面は異臭に包まれてしまいました。まんま、ウンコの香りやん!にもかかわらず、作業員のユタカくん(既婚者)は臆することなくポンプの中に手を突っ込むと、素手でウンコの香りのする汚泥状の物質を引っかき回すのでありました。あんな手で触られたり、揉まれたり、こねくり回されたりして、だいじょーぶなのか、ユタカくんの妻?…と、ふと心配になってしまいましたが、“シモの道”も、なかなかキビシー道であるなぁ。。。と思った次第です。

(おしまい♪)



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