“着工前”の写真を撮りそこねました。いやあ、困ったことになりましたなぁ。というのもですね、官公庁のシゴトというのは写真が命でありまして、中でも“完成写真帳”というのは、ちゃんとシゴトをしてもコイツを出さないと、ゼニを貰えなくても文句は言えない。…とまで言われるほど大切なものでありまして。ちなみにこの“完成写真帳”というのはどういうものかと言うと、工事の“着工前”と“完成”の状況が一目でわかるように、１枚の紙に２枚の写真を並べて貼ったものなんですが、その“着工前”のほうの写真を撮るのを忘れておりました。４箇所あるＭＨＰ場のうち、２箇所で“ポンプ制御盤取付着工前”の写真を撮りそこねておりました。あ、ＭＨＰ場というのは“マンホールポンプ場”のことでありまして、マンポン業界ではもっぱらこの略称が用いられているわけでありますが、いやあ、工事をやってる時から、「そういえば“着工前”の写真って、撮ったっけ？」ということが気になってたんですよね。いや、僕自身は間違いなく、自信を持って「撮ってない！」と断言出来る状況だったんですが、「あっ、やべ。」とか思っているうちに電気屋さんがどんどん電柱を建て始めてしまい、気の弱い僕はどうしても 「まだ“着工前”の写真、撮ってないでっす♪」 という言葉を切り出すことが出来なくて、どうしよう、どうしようと思っているうちに、今日に至る。…とまあ、そういうワケなんですけどね。あの時に勇気を出して言っておけば。…と悔やんでみても時すでに遅し。後悔先に立たず。覆水盆に返らず。でもまあ、“こぼしてしまったミルクを悔やんでも仕方がない”という諺もあることだし、人生にはよくあることだよねっ♪…と、担当者の肩をポンと叩いてそれで済めばいいんですが、何せ相手は“お役所”ですからねぇ。なかなかそう簡単に問題が解決するとは到底思えないわけでありまして。。。

　幸いにも“完成”のほうの写真は全機場、抜かりなく撮影しております。ま、こちらのほうはシゴトが終わってからゆっくり撮ればいい話なので、たとえ気の弱い現場監督だったとしてもさほど問題はありません。ただマンホール内部の写真の場合、あまり工事完成から日が経過していると、既に下水道の供用が開始されてウンコが流れ込んでいたりするので油断はなりません。“工事完成後からウンコ流入前まで”が撮影のポイントと言えるでしょう。一方、ポンプ制御盤のほうはそれほど急速に色が変わったり腐ったりするものではないので、ま、完成から１ヶ月間くらいは大丈夫ですね。で、今回、僕が撮影した“ポンプ制御盤取付完成”の写真の中に、やや問題のあるものが１枚含まれおりました。制御盤の隣に電柱があったんですが、そこに“○○家告別式”の会場案内の“黒い指マークの矢印”が貼られていたんですよね。僕個人としてはこういうのはまったく気にならないんですが、担当者が性格の細かい、例えば某・東芝のチャーハン男みたいなヤツだったりすると、何か文句のひとつも言われかねませんよね。そこで僕は万全を期して、デジカメでもう１枚“完成”の写真を撮っておくことにしたんですが、その作品がこれでございます。

　で、僕はこの写真をしみじみと眺めて、ふと思ってしまいましたね。何とかコイツを元にして、“着工前”の写真を捏造出来ないものかと。画像編集ソフトを使えばわりと簡単に出来そうな気もしますよね。試しにちょっとやってみますかね？

　後から建てた電柱と、取り付けたポンプ制御盤をナチュラルな色で塗りつぶしてみましたぁ。もうこれで、誰がどう見ても制御盤が取り付けられていることには気付きませんよね。これが工事の“着工前”だと言われれば、さしものチャーハン男だって文句のつけようがないでしょう。ただ、唯一の弱点といえば、周りの景色が完成時とまったく同じということでありまして、担当者が観察眼の異常に発達した人だったりすると疑問を持たれる可能性が皆無であるとは言えません。ここはひとつ、更なるエフェクトを加えて“もうひとつ上の世界”を目指したほうがいいかも知れませんな。

　トリミングして、サイズを元の大きさに拡大して構図に変化を持たせ、更に色合いと明るさを変えて、軽くモザイクを入れて、最後の仕上げに“油絵調”にしてみましたぁ。全体的に何が何だかワケがわからなくなって、これでさしもの観察眼の異常に発達した担当者も、まさかこれが“完成写真”を加工したものだとは露ほどにも疑わないことでありましょう。…って、いやあ、我ながらあまりの出来の悪さに、「使えねーって！」と思ってしまいましたが、ここでふと掲示板を覗いてみると、かれい技士が素晴らしいアイデアを提供してくださっているではありませんか。「シャシンはジャケ絵の要領でごまかせ」って、なるほど、その手がありましたかー。写真がなければ自分で絵を書けばよかったんですな。かくして僕は無事、“完成写真帳”を完成させたのでありました。