『塩サバ１号のハワイ日記（その４）』
　さて、このハワイ日記も連載４回目にしてようやくハワイ寸前まで来ました。も しかしたら、このままハワイに着かないで終わっちゃうんじゃねーだろうな、と心配に なった人もいるでしょう。脱ぐか脱ぐかと思っているうちに終わってしまったスケベビ デオみたいなもんで、思わず「それはないで！」と叫んでしまいます。今年の６月には オーストラリアだそうですからね、ウチの会社。９０００万円の赤字なのに。会長死ん だが、大丈夫か？いきなり「喪中につき中止」なんてことにならんだろうな。もしそう なったら、私はグレるぞ！さて、ハワイ。日本時間で午前３時くらいの気分のままホノ ルル空港に到着した我々は当然不機嫌でした。人間、誰しも眠いと不機嫌になります。 試しに夜中の３時に隣に寝ている人を揺り動かしてみてください。
　「ねえねえ、ちょっとあなた、起きてよ！」
　「なんだ、こんな時間に…。」
　「私ねえ、子供の頃、喪中の事を“もなか”って読んでたの。ほら、葬式の時っ てよくモナカとか食べるじゃない。」
　「ははははは。それは楽しい！」
　こんな夫婦はいません。そういうわけで不機嫌な一行はホノルルに降り立ちまし た。なんや、思ったほど暑くないやん。と油断した隙を狙って、猛烈な熱気が襲ってき ました。暑さとか辛さとか、必ず時間差で攻めてきますよね。むっちゃ辛いカレーなん かもそうで、一口めは別になんということない。で、なんや、たいしたことないやん、 と思った瞬間に「どわーっ」と来る。性格が素直じゃないんですね。子供の頃、あまり かまってもらえなかったのかも知れない。で、あまりに暑いもんで私はたちまち後悔し ました。しまった。こんなとこ来るんじゃなかった。これは１日中ホテルで寝てるテや な。しかし黄色い服を来た添乗員のネーチャンは許してくれませんでした。いい人だっ たけどね。服は黄色いけど。私は素直におねえさんの指示に従い、ホノルル市内の観光 にいそしむのでありました。まずはショッピングセンターへ行きましたね。でも私ね、 買い物にぜんぜん興味ないの。ガイジンと係わり合いになることなく、なるべく何事も なくコトを穏便にすませたい、ちょっぴりヤル気のない当時２５歳なの。しっかりせえ よ。とヒトに励まされながら後ろをついて歩いてました。それから、なんだかよく知ら ぬが、とにかく風が強い！というところへ行きました。ヌアヌパリというところだった かな。何があるとか何もないとかいった事は問題ではなく、とにかく風が強い！という ことだけが売り物なのだ。こういうところにくると、人は２つのタイプに分別できます 。「わあっ本当だ、風が強ぉーい！」と感動できるタイプと、「確かに風は強いが、そ れがどうした？」と、妙に醒めたタイプ。後者は冷静沈着な人間として会社内での評価 は高いが、一緒に旅行すると限りなくつまらない。前者は一緒にいると楽しいけど、消 防士にするにはちょっと不向きですね。「わあっ、燃えてる燃えてる、すっごーい！」 とか言って焼け出された人の顰蹙を買いそうだし、ちょっと燃え具合が地味だと、「え ーい、かけちゃえー。」とか言ってガソリン撒き散らしたりしちゃいそうだし。ま、「 風が強いねー。」とか言って隣の人の目を見つめ、互いにウンと頷きあう。というのが 節度あるオトナの行動と言えるのではないでしょうか。でも我々が訪れた時はそれほど むちゃくちゃ風が強いというわけでもなく、みんな何となく「騙された。」という感じ で所在なく付近を散策してるのでありました。そのあと、パンチボウルの丘という所へ 行きました。何となく、パンチパーマの兄ちゃんがボーリングに精だしてるトコロ、と いうイメージがあったんですが、全然違ってただの墓がならんでいるだけのトコロでし た。それからダイヤモンドヘッド辺りの別荘地をバスの窓から観察しましたが、別段な んの感慨もなかったです。ホノルルちゅうのはワイキキとショッピング以外、これと言 って見るべきものは何もない、というのが市内観光の結果明らかになりました。だから 黄色い服のネーチャンが許してくれさえすれば、ホテルで１日寝ててもいいわけです。
　観光が終わって、いよいよ昼食ということになりました。昼食、それはランチ。 シーフードの鉄板焼き、コックがコショーの入れ物をくるくる回すパフォーマンス付き 、という店です。昔、クラスに必ず１人はいたよなあ、指先で鉛筆をクルクル回すのが 得意なヤツ。あれです。ああいう少年が大きくなって、行くところがなくて、こういう ところでコショーの入れ物を回したり放り投げたりしてるのです。本人にしてみればそ れなりに充実した人生だと言えるのではないでしょうか。さて、昼食のほうはエビが出 て、貝柱が出て、さていよいよ肉か！と参加者の期待が一気に高まったところで、それ を見事に裏切るかのようにそれっきりで終わってしまいました。コックの兄ちゃんが、 俺、この瞬間だけちょっぴりバツが悪いんだよねー。という感じで下がっていきました 。
　さて、いよいよ次回はワイキキビーチが登場します。お楽しみに。

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