『塩サバ１号のハワイ日記（その６）』

『塩サバ１号のハワイ日記（その６）』

『塩サバ１号のハワイ日記（その６）』

（前回までのあらすじ）ハワイのサンセットクルーズは琵琶湖の外輪船「ミシガン」だった。

　次の日は、うちの会社の予定では「ワイキキ・サブマリン・ツアー」に参加ということになっていた。でも、潜水艦こわいよー、溺れるよー、死ぬよー、とダダこねて参加拒否しちゃいました。我ながら、なんて男らしい！で、勝手に１人だけ「トロピカル・マリン・スポーツ」というオプショナル・ツアーを申し込んでおきました。実はですね、私はこう見えてもですね、ウインド・サーファーなんだ。アルペンで９８，０００円のオールラウンド買ったんだ。海、好きなんだ。おたく、そういうふうには見えないしィ、そういうタイプじゃないしィ、似合わないしィ。なんて言われても平気なんだ。実は川でしかやったことないんだけど、黙っていればわからないんだ。そうなんだ。頑張るんだ。というわけで、指定された集合場所へ行ってみると、同じ会社のおっさん＆女の子が数人そこにタムロしておりました。１人じゃなかったんだ。心強いんだ。と思っていたら、彼女達は別のスキューバ・ダイビング・ツアーの参加者で、私は１人だけ強制連行されるように別のところへ引っ張られていきました。そこには見ず知らずの女の子２人組が待っていたので、とりあえず挨拶してみました。

「１人ですが、よろしくぅー。」

「…。」

あーっ、無視されたー。クヤシイなあ。そこにはバカでかい黒塗りのリムジンが停まっていて、どうやらコレに乗れ！ということらしい。トランクに荷物を放り込んでると、どうやらさっきの女２人組の他に、女３人組というのも参加するらしい。オンナ５人にオトコ１人。これはこれは、と思って後部座席に乗り込もうとしたら、ガイジンの運転手に、

「アナタ、ヒトリ、前ネー。」

と言われ、そのまま助手席に押し込められてしまった。出発進行。後部座席の女２人組と女３人組は互いに面識がないらしく、シーンと静まりかえっていて、車内は気まずい雰囲気につつまれておりました。こういう時は運転手が気をきかせて、

「ハーイ、日本ノミナサマ、コンニチハ。“はわい”ヘヨーコソ！今日ハ、トビッキリスペシャルナ“みゅーじっく”デ、ミナサマヲオムカエシマショウ。ヘイ、ミュージック、スタート！」

とかＤＪして、

　　♪みなみの島の大王は～　その名も偉大なカメハメハ～

なんて、とびっきりクールなＢＧＭを流してくれればイイんだけど、この運転手はサービス精神皆無。ただ黙々と運転を続けます。そのうちに路肩に車を停め、なんか無線でボソボソと交信を始めたりします。あっ、と思いました。そうだったのだ。騙されたのねっ。私達、どこか遠いクニへ売りとばされるのねっ。だから若い女の子ばかりだったのねっ。１人だけアッチ系のヒトがいて、私は彼のオモチャにされるのねっ。うーん、エライことになった。こんなことならおとなしく潜水艦で海にでも潜っておればよかった。と悔やんでも後の祭り。やがて、悪の組織「カメハメハ団」のグルらしい車が現れ、それに先導されるように６人のスケープゴートを乗せた車は走っていくのだった。危うし！塩サバ１号の貞操の危機やいかに！

　しばらくして高速道路に乗ったのだが、えらく渋滞していてさっぱり動かない。「カネオヘ」だか「アヘオヘ」だか「グヘグヘ」だか「デヘデヘ」という所に行くらしいのだが、いつになったら着くのやら。結局は１時間くらいで目的地に着いたのだが、いやあ実際、心の底からほっとしました。

　着いたところは何か鄙びた漁港みたいなところで、「トロピカル・マリン・スポーツ」という華やかさがまるで感じられない。なんか「冬の日本海・寒ブリツアー」みたい。前を走っていた車には男３人と女１人が乗っていて、これでこのオプションの参加者が全員集合ということらしかった。観察した結果、メンバーの構成は次の通りであった。

女の子２人組×２、男２人組、夫婦１組、単独女１人＋「アロハ稲葉」。あ、最後のは私の源氏名ね。女３人組だと思っていたのは、どうやら２人と１人だったらしい。それぞれ互いに面識はないようで、どこでどう掻き集めたのか、おそるべき寄り合い所帯なのである。そこから船に乗って１０分ぐらい走るらしい。３時に迎えの車が来るということだ。

「キョウハ、ジカン、タクサンアルカラ、イッパイデキルネー。」

船の中でガイドの現地人兄ちゃんの説明をうける。

「スキューバ、カヌー、ヨット、ウインドサーフィン、デキルネー。」

ウインドさえ出来れば、あとはどーでもよろしいねー。僕、ウインドだけひたすらヤルねー。

「タダシキョウハ、ジェットスキー、デキナイネー。」

だから別にいいって。船で１０分ほど走ると、突然海の色が変わった。

「コノイッタイ、トテモアサイネー。ボクダト腰グライネー。アナタタチダト肩グライネー。」

へー。海の真ん中に、そこだけ浅くなっている一帯があるんだ。たいしたもんだ。さすがハワイ！ここにきてようやく、トロピカルなハワイの飲みものグァバ、という気分が盛り上がってくるのでありました。

さて、次回はいよいよチャレンジ・ザ・マリン・スポーツの巻です。いつになったらウインドの鼻血が、いや話がでるんだ。いや、たぶん次回には大丈夫だと思いますんで。乞うご期待。

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