『ウインドで現代病を直すんや!(その1)』
 さて、今回から新連載です。ウインドサーフィンのお話。タイトルはひろし君が ウインド雑誌に書いていた記事から勝手に拝借しました。ひろし君とはどこのひろし君 かというと、戸塚のヨットスクールの校長の宏くん。大変かっこいいヘア・スタイルと 、りりしいお顔のあの方です。いや、「カッ○頭とカ○ル顔」と書いて名誉既存で訴え られた人がいましたからねえ。「パ」と「エ」。いや、なんでもないっす。最近では( と言っても3〜4年くらい前の記事だけど)宏先生はヨットスクールの授業にウインド サーフィンを取り入れ、現代病の治療に効果を発揮しているようです。痛風にも効くの かなぁ?あ、登校拒否とか家庭内暴力とか、そっちのタイプの「ビョーキ」でしたか。 でも、そういう難しい問題はいっさい登場しないと思います。だって、塩サバなんだも ん♪
 私がウインドサーフィンを始めたのは専門学校在学中のコトであります。という とイタチくらい、いやハタチくらいかぁ。10年も前の話やん。えーと、最初に言って おきますが、私は決してウインドサーフィンが似合うようなタイプではございません。 どっちかというと「趣味は鉄道模型集め」みたいなタイプで、マリンスポーツというよ り、まりも印のショーツが似合う男。どこに売ってるんだよ、まりも印のショーツ。だ から「ウインドやってる」というだけで想像を膨らませて、「ステキっ♪」などと勝手 に惚れてはいけないよ、べいびぃ。(←しかもちょっとアホ。)ついでに言うと「ウイ ンドサーフィン」という名前は商標名で(バンドエイドとかジープなどと一緒)、正式 には「ボードセイリング」と言うようです。でもめんどいから、この原稿では「ウイン ドサーフィン」もしくは「ウインド」と称することにします。だって、宏くんもそう言 ってるんだもん。
 ある日、私が家でぼーっとしていると、塩サバ2号がウインドサーフィンの道具 を買って家に帰ってきました。いや、「たこ焼き」とか「肉まん」とかなら解るが、い きなりウインドの道具。この中年男の身に何が起こったのか?いや、中年男と言っても 当時26歳だけど。若かったのね、このヒトも。で、ウインドの道具。「友達から中古 を2万円で売ってもろた」そうである。この2万円というのがいかに破格の値段である かは、その道具を車に積むキャリーが2万2000円することからもよくわかる。普通 、新品で揃えると20〜25万はかかるもんね。
「というわけで明日、ウインドやりにいくでな。」
と塩サバ2号は張り切っているのである。
「あ、そんならついてく!」
と言ったら
「アンタは就職試験前やからヤメときなさいっ。」
と親に叱られてしまった。
「就職試験の前やろが試験に受かってからやろが、溺れて死んだらいっしょやん。 」
と言ったら
「そういう問題やない!」
と怒られた。ちくしょう、グレてやるぅ。というわけで、シオ2は次の日、一人で 木曽川へ行ってしまいました。と書くと、
「え?川でウインドするのぉ?」
と思った人&馬鹿にした人が多数いることでしょう。私も最初そう思った。川ぁ? ンなもん、ファイトぉ!いっぱーつ!な「リポ・D」兄ちゃんがカヌーで下るところや ん。ところが河口からさかのぼること30数キロ、通称「マカイ・ゲレンデ」と呼ばれ る場所があって、そこには近隣のシロート・ウインドサーファーが大挙して押し寄せて いるらしいのである。マカイ。ハワイのマウイみたいで、なんかカッコええやん。でも 漢字で書くと「馬飼」。むっちゃカッコ悪いやん!そこには馬飼大堰というのがあって 川の流れをせき止めているので、ちょうど湖みたいになって流れも穏やかで初心者には ぴったりらしいのである。
 ちなみにウインドちゅうのは波がないとアカンのちゃうか?と思っている人が多 いでしょうが、普通のサーフィンと違ってウインドは波がなくてもOK。ザバザバの波 の中で乗る「ウェイブ」と、波がないところで乗る「スラローム」では使うボードやセ イルが違うのである。ちなみにシオ2がつかまされたのは「オールラウンド」という長 さが300センチ以上ある大きいタイプ。シロートにはこのタイプが乗りやすいようで す。いぇーい!もうノリノリ、みたいなぁ。ちなみに、これは後から解ったんですが、 この2万円の中古品は「サーファー艇」と呼ばれ、ウインドサーフィン誕生当時から何 の進化もしていないという、ほとんどカブトガニのような存在で、乗っているだけでバ カにされる貴重な代物でありました。だから2万なのねん。
 さて、就職試験も無事終了し(しかも落ちた)、いよいよウインド・デビューで す。デビューに先立って、ウインド必要小物を買いにいきました。ウインドにはボード 、マスト、セイル、ブーム、ジョイントなどの大物ワンセット(シオ2が2万で買った ヤツね)の他に、シューズ、ウェットスーツ、ハーネスなどがいるという。ハーネスと いうのは昔、キャンディーズが歌ってましたね。
「もうすぐハーネスねぇ、恋をしてみませんかぁ♪」
どうやら恋をするのに必要な道具らしいが、なくてもだいじょうぶらしいし、1万 数千円はするのでヤメた。ウェットスーツはいくらだ。なに、3万ウン千円?こっちは 4万?いらん。だいたい夏ならウェットなど必要ないのだ。海パンいっちょうで何の問 題もない。場合によっては普通のグンゼパンツでも可。パンツで思い出したが、コドモ の頃、親戚のうちへ遊びに行ったんです。そしたら町屋川へ泳ぎにいこうという話にな った。海パンがないからと渋っていると、そんなん普通のパンツでええやん、と強引に 連れ出されまして。で、しかたなくグンゼパンツで泳いでいたら、見ず知らずのガキが 私を指さして
「あーっ!普通のパンツやーっ!」
私は深く傷付いて、以後、人前でパンツ姿をさらせないシャイなおじさんになっち ゃいましたぁ。
 閑話休題。シューズ(マリンシューズという、へなへなの上履きみたいな格好の ヤツ)は3千円。安いから買う。これは買っておいたほうがいいですね。ボードの上で 足が滑らないし、石の上に乗っても痛くないし。最近ではしっかりホールドできるタイ プのスポーツサンダルを履いてるんだけど、日に焼けると足の甲の部分がベルギーワッ フル模様になって、たいへん気持ち悪いです。それはそうと、やっぱりウェット欲しい ナァ。もっと安いのはないのか?と思って捜してみると、ありましたぁ、「ベスト」6 千円。ようするにウェットスーツの素材で出来たチョッキみたいな形のペナペナな代物 。ライフジャケットじゃありません。安かったので思わず買ってしまいましたが、これ は以下の3つの点において、限りなく失敗でした。
 1.ださい
 2.むさい
 3.役にたたない
えーとまず、1と2。ださい&むさい。色が河童みたいな薄緑色&形がチョッキ。 これしかなかったんだけど、買う前に「これはいくらなんでもアカンやろ!」と気付く べきでした。迂闊でした。
3の役にたたない。先程もふれたように、夏なら海パンだけで十分なんです。春と 秋ならちゃんとしたウェットが必要で、こんなベストだけではどーにもならん。冬だっ たらドライスーツじゃないと死にます。ちなみにドライスーツというのは中に水が入ら ないようになっているので、下に普通のセーターとか着ててもOK。ウェットというは すぐにベタベタになるから、水に落ちると何の役にもたたんくらい冷たい。ただ、漂流 して流されて救助を待つ場合、体の表面から体熱が奪われないので助かる可能性は高い 。ベストだと、まず確実に死にます。そんなわけで、この役にたたないベストは買った その日の夜、入浴の際に風呂場で試着され、その鏡に映った己の姿のあまりのキュート さに愕然とし、そのまま押し入れの奥深くへと幽閉されることとなりました。
 さて、次回はいよいよ木曽川でのウインド・デビューの巻。更新は来週月曜の予 定です。お楽しみに。


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