『ウインドで現代病を直すんや！（その５）』

（前回までのあらすじ）

えーと、間が開き過ぎて、どこまで書いたのか忘れちゃったなぁ。そうそう。つい に我々は念願のウェットスーツを手にいれたという、そういう話でした。

　

　なんでもいいけど、このところ全然ウインドに行ってません。シゴトだったり雨 だったりオーストラリアだったり今週は風邪だったりでして。期待のゴールドコースト も冬だったので、ウインドのオプショナルツアーは開催してくれませんでした。ま、海 でちょっと泳いできましたが。この話はおいおい「観光ガイド」のコーナーで。

　

　さて今週は本文に先立ちまして、海水浴シーズン到来♪ということで「とってお き情報」をひとつ。皆さんは水着に着替える時、どうしてますかぁ？私は不幸にして女 の人が着替えているところを見たことがないのでよくわかりませんが、（あ、のぞきビ デオがあるか。）オトコの場合はたいてい腰にバスタオルを巻いて着替えてますね。私 が小学生の頃には「秘技・パンツ抜き」というのもありましたが。これは普通のパンツ の上から海水パンツをはいて、ふともものところからパンツを引っ張り出すという、か なりの大技でありました。パンツがブリーフタイプでないとうまくいかないのと、逆に 海パンから普通のパンツに着替える時には応用がきかないのと、希に足がつるのと、か なりの確率でパンツが破れるのが欠点と言えば欠点でしたが。そんなわけで、あまり真 似するヒトはいなかったように思います。そこでバスタオル方式。これにも短所があり ます。特に小さなスポーツタオルのようなモノを用いた場合、結び目がほどける→タオ ル落ちる→出血大サービス♪という経過をたどる場合が多々あります。その場に居合わ せた人が全員、見せたい人＆見たい人であったなら問題は起こりませんが、少なくとも 私は見せたくもないし、見たくもない。

　

　そこで私は更衣室のない木曽川マカイゲレンデではもっぱらポンチョを愛用して おります。スキーの時にウエアの上から着たりするポンチョね。これだと落下する心配 もないし、ラクでっせ。だいいち見た目がカッコイイし（図参照）。この夏、ブレイク の気配。さあ君もポンチョをかついでビーチへＧＯ！チョキ出す子もビーチへＧＯ、Ｇ Ｏ！

　

　さてウインドの話。念願のウェットスーツを手に入れて、いよいよウェット・デ ビューの日がやってまいりました。６月末だからどうしてもウェットがいるという気候 ではありませんが、「風呂場以外でウェットを着たい。」という欲望はどうにも押さえ ることができません。というわけで早速ビーチで身につけてみました。おお、我ながら カッコいい。顔さえ見なければプロのウインドサーファーちゅうカッコやん、多分。一 年近いブランクがあったんですが、「一度覚えた自転車の乗りかたは死ぬまで忘れない 。」という孔子の言葉どおり（←わい、そんなこと言うてへんがなＢｙ関西弁の孔子。 ）セイルアップも難なくこなしてスイスイ前にも進み、今シーズンは上々の滑り出しな のでありました。しかし２週間もするとすっかり真夏になってしまい、ウェットなんか 着てられっかーい！暑いがな！という気候になってしまいました。ああ短かったなぁ、 ボクがぱっと目にはプロに見えた（であろう）日々。

　

　さてそんなある日、我々の元にひとつの朗報が飛び込んでまいりました。新しい セイル（ただし中古）を１万円で売ってもいいという人が塩サバ２号の眼前に現れたの です。その新しいセイルというのは（ただし中古）という「ことわり」があることから もわかるように、要は新しくもなんともないタダの中古品なんだけど、なんせ１万円で ある。社会人２人が負担を分担しあえばまったく手が届かないこともない、というよう な値段であります。正義と決断力の男、塩サバ１号は直ちに塩サバ２号に掛け合いまし た。

「買え！」

買いました。今まで使っていたセイルはサーファー艇のセイルで妙に正三角形でカ ッコ悪く、しかも水色で地味である、という製品だったんですが、新しい中古セイルは ワケが違いました。なんせ中古で１万円もしたんだもん。やっぱりサーファー艇のセイ ルで妙に正三角形でカッコ悪いんだけど、色はオレンジ色で派手であるという、社会人 １年生ごころにも「あんまりかわりばえせんなぁ。」というシロモノでありました。ま 、透明の部分がスケていて向こう側が見えるだけでもヨシとしなくては。なんせ今まで のは透明部分が白濁して向こう側が見えず、「ンなら透明ちゃうやん！」という状態に なってたもんな。

　

　さて、２年目に突入した私のウインド技術は目を見張るような進歩を遂げており ました。「ひいき目に見て、人並み以下やな。」というところにまでこぎつけておりま した。５段階評価でいうと「２」、優・良・可・不可だと「可の下」もしくは「不可’ （ふかダッシュ）」と言ったところ。もう恐いモンなしです。ロープ振り回し方式で、 なんとなく気がついたらターンしちゃってたりします。川の対岸まで行って、そのまま 生きて帰ってこれたりします。

「もうキミに教わることは何もない。」

そんな台詞を塩サバ２号に吐き捨て、ある日の私はビーチを出発しました。かなり 風の強い日で、スピードもまずまず。ただし自分の行きたい方向には進めん。進めん言 うたら全然進めん。という情況です。ようするに、「どこへ行くって？そんなこたぁ、 風に聞いてくれ。」って感じ。この台詞、なんだかハードボイラーで荏原ボイラーでと ってもカッコいいんだけど、要するに「もしかして流されとるんとちゃうかぁ？」とい うことでして。その事に気付いた時はすでに遅く、私はかなりビーチから離れたところ まで来ちゃってました。やばい。早めに引き返さないと帰れなくなる。私はすかさず「 ロープ振り回し方式」で１８０度ターンしようとしましたが、つい勢いあまって３６０ 度ターンしちゃいました。そのまま、風に乗って結構なスピードでしばらく疾走。おお 、結構速いやん♪って、ヨロコンでる場合じゃないって！気がつくと、益々ビーチから 離されておりました。この期におよんで、わりと楽観視していた私もちょっとアセって きました。まじ流されたかもしれん。とにかくセイルアップだ。渾身の力をこめてロー プをひく。おお、風が強い。おおおお、ばたん。（←セイル倒れた。）こうして私は静 かに死を待つ身となったのです。

　

　とりあえず乗って帰る事は諦めて、泳いで帰ることを決意。ビーチまでは５００ メートルくらいありますね。ンなもんすぐやん思うと大きな間違い、２５メートルプー ルで１０往復の距離ながら、こっちにはボードとセイルという「お荷物」があります。 川なんだから無限に流されることはなく、１５０メートルもいけば対岸にたどりつける んだけど、そんなことしたら車を停めてあるところまで、橋を渡ったりして何キロも歩 かなアカン。それだけは避けたい。やっぱり川を泳いで戻る手であります。試しに片手 でボードにつかまって、もう片手で平泳ぎというのを１０分ほどやってみましたが、こ れはまったくの無駄でした。１０分たっても周囲の景色はまったくといっていいほど変 わっておらず、すなわち、ほとんど進んでないという事実を如実に現しております。無 駄な事はやるだけ無駄、というのは中国４０００年の昔からの常識、よく考えたらあた り前のことなので賢明な私はすかさず次の手に移行しました。続いてボードの上に腹ば いになっての「クロール攻撃」。これは「パドリング」と言って、流された時の基本姿 勢。もっともコレはマストとセイルなしのボードだけの状態ではじめて威力を発揮する 攻撃で、「命が惜しかったらマストとセイルを捨てろ！」が合言葉。しかし、大枚１万 円はたいて買ったばかりのセイルをどうして捨てられましょうか。しかもマストまで。 普通に買えば何万かするぞ。物を大切にする精神に溢れた私はセイルをつけたままパド リングを強行。これは「水中で平泳ぎ」よりは進みました。そのかわり無茶苦茶に疲れ る。これなら時間はかかっても平泳ぎのほうがマシだ。そう悟った私は「これからは平 泳ぎ一筋で行こう。余計なことは考えまい。」と心に誓い、それから３０分無心で泳ぎ 続けました。

　努力の甲斐があって、ビーチまで少しだけ近くなりました。残り４００メートル といったところか。３０分で１００メートル進んだんだから、ビーチまであと２時間か 。瞬時にこれだけの計算が出来るんだから、まだ気は確かですね。その冷静沈着な頭で 判断したところ、さっきに比べてかなり風が弱くなってきています。これなら行けるん ちゃうやろか？よし、決行だ！勇気と決断力の男、塩サバ１号は直ちにボードによじの ぼると、直ちにセイルアップを敢行。その瞬間、ぴゅーっと風が吹いてきて、ボードは 見事に５０メートル進みました。ビーチから反対の方向へ・・・。いや、今までの人生 でこれほど後悔した瞬間はありませんでした。

　

　今度こそ、余計なことを考えずに平泳ぎ一筋です。途中、強風にもかかわらずウ インドをのりこなしている兄ちゃんが接近！ちょっとカッコ悪いが背に腹は変えられん 。助けを求めてみた。

「ちょっと向こうまで引っ張ってってぇ。」

するとその兄ちゃんは

「ちょっと待ちなさい。向こうまで行って戻ってくるから。」

そう言い残すとビーチへ向かって去っていってしまった。そして２度と姿を見せな かった。見捨てられたのだ！アンタ、小学校の国語の時間に「走れメロス」読まんかっ たんかい！人間、結局は独りで生きていかなければならんのだなあ。としばし感慨に耽 っていると、やがてやっぱり流されたのか、ボードにつかまって浮遊している人物を発 見。おお同士よ、死ぬ時は一緒だ。と思って頼もしく眺めていると、同士はいきなりセ イルアップしてビーチのほうへ消えてしまった。またしてもか！アンタ、中学校の国語 の時間に「智恵子抄」読まんかったんかい！ぜんぜん関係ないけどな。一瞬、もう１回 セイルアップしてみよかと思いましたがさすがに思いとどまり、そのまま泳ぎ続けるこ と約２時間、ようやく私は足のつくところまでたどり着けました。ああ、よかった。

　

　というわけで私は無事に生還できたわけですが、この夏はここマカイ・ゲレンデ でジェットスキー乗ってた人が落ちて行方不明になったりしました。いや、マジな話、 これからの季節、水の事故には気をつけてくださいね。水に沈んで死んじゃったら、浮 かばれるものも浮かばれません。では、また再来週。

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