『ウインドで現代病を直すんや！（その６）』
（前回までのあらすじ）
流されたが無事に生還した。
　
　というところまで前回書きましたね。本日は木曽川でサマーベッドに寝転びなが らの原稿書きです。学校が夏休みに入ったせいか、「素人さん」の学生風が多いですね 、今日は。「かえってこーい！」なんて叫んでいる声も聞こえてきます。それに対して 「足とどかんでぇ、ここぉ。」なんて答えが聞こえてきます。その声にそれほど「せっ ぱつまった感」はないので、まあ大丈夫でしょう。風もあんまりないし。さて今回は新 しいボードを買いにいった話をしましょう。
　
　２万円で買った時からすでにド中古で、中古ちゅうことはすなわち新品でなかっ た我らがサーファー艇は、２年間酷使されたせいで「これはもうロシア行くしかないな 。」というくらい中古になっていました。関西には「関西中古センター」というのがあ って、古いボードとかを買いとってくれるらしいんですが、そこに持っていったとして も「兄ちゃん、こら、あきまへんな。鍵のかかった金庫は？それもあきまへん。」なん て言われるのがオチやな、というくらい中古化しておりました。そこはそれ、関西の商 人なんやからそれくらいのことは言うやろ、という私の推測なんですが。ということで 、今回は関西人はなぜボケるか？ということについて考察してみたいと思います。関西 人はなぜボケるか。これは「ピントのあってないカメラで撮った写真はなぜボケるか」 という問題と並んで、今世紀でもっとも不可解な謎であると言われております。老人ボ ケのメカニズムが解明されることはあっても、関西人のボケは自分でもわからへん。と いうのが実状のようで。ということで、「では、思いきって新しいボードを買おう。」 ということで塩サバ兄弟（１号と２号）の意見は一致しました。
　
　ウチの会社はですね、給料が安かったり、休みの日に呼び出しの電話がかかって きたり、エンジンが焼けたり、スーパーが停電になったりして怒られたりするのが難点 ですが、よく海外旅行に連れてってくれるのとボーナスが３回出るのがいいところ。と くに春の決算ボーナスは、俺、これがなかったらとっくにこんな会社やめとんでぇ、と みんなが言ってるくらい好評をもって迎えられております。（そのかわり夏と冬のボー ナスは安い。しかも今年の決算ボーナスは去年の半額だった。もしかして私がエンジン 焼いて大損害をもたらしたせい？）というわけで、決算ボーナスが出たばかりで金持ち だったんでしょうね、その当時。さっそく新しいニューボードを買いにいこうというこ とになりました。問題はどこで買おうかということ。
　
「ボードいうたらやっぱり豆腐屋やん。」
「なんでやねん！」
「ボードも豆腐も水に浮かんでいるし。」
「あ、なるほど。」
「納得するなって！」
ということで豆腐屋案は却下。ま、最初からなかったけどね、そんな話。で結局、 やっぱりスポーツ用品店で買うのがいいのではないかということに。なんか当たり前の 結論やけど、こんなところでいちいちボケててもしょうがないし。ウインドの専門店（ 冬はスノーボード売ってたりする）というのも何件かあるのはあります。ウインド雑誌 によく広告が載ってます。ちなみに戸塚センセーへのインタビュー記事「ウインドで現 代病を直すんや！」もウインド雑誌に載ってました。宏くんの言うことにも一理ありま すよね。今日もウインドをしていて、思わず「明日から学校へ行こう！」って思ったも ん。「お母さんを殴るのもやめよう！」とも。ついでに「先生を刺すのも３年生になっ たらやめよう！」と。今すぐやめろって！
　
　そんなわけでウインド専門店というのは、なんかシロウトには気がすすまんので すよね。思いきり馬鹿にされそうで。無知につけこまれて高いモン押しつけられたり。 無知につけこまれて鞭でうたれたり。無知につけこまれてムチムチ・ガールになったり 。ならねーって。そこでわれわれ塩サバ兄弟には秘策がありました。
「アルペンで買おう！」
前の年アルペンでウェットスーツを買った時、そこにフルコンで９万８０００円の セットがあったという話は書いたか書かなかったか覚えがないんですが、もしまだアレ が売れ残っていたらソレを買おう。もしなかったら買うのはやめよう。少なくとも９万 ８０００円以上はビタ１文だせんと。ということで４月２９日、「決死のウインド購入 隊」は名古屋へ向けて出発したのでした。
　
　その日のスケジュールはこのようなものです。
１．大須（東京で言う秋葉原みたいなところ）へ行ってパソコンのゲームを買う。
２．吉野家で牛丼弁当を買う。
３．アルペンで９万８０００円のウインド・セットを買う。
４．その勢いにまかせてマカイ・ゲレンデへ直行し、本年の初ウインドを挙行する 。
注１）今まで早くても６月やったのに、４月では寒いんとちゃうか。
注２）でもまあ、ウェットがあるで何とかなんのとちゃうか。
注３）新しいボード買ったら、やっぱりすぐ乗りたいやん。
注４）そらそうや。
　
しかしまあ、パソコンゲーム（「シム・シティ」。だからそれくらい前の話）と牛 丼と９万８０００円のウインド・セットとは、リッチなんだかビンボーなんだかアウト ドア派なんだか暗いんだか、よくわからんライフワークの人々だなぁ。というわけで「 シム・シティ」と牛丼買った私らは、期待に胸をわくわくさせてアルペンの入り口をく ぐったのでした。目指すブツは・・・、おお、あったぁ！
　
　当時、私達は極めて無知なムチムチ・ボーイでした。いや、２人だからムチムチ ・ボーイズか。まあ、どうでもいいが。今から思えば所詮はフルコンで９万８０００円 （通常の半額以下）のバッタもんだったんですが、当時の私達にはキラキラと輝いて見 えたものでした。おお、こんな素晴らしいモノが私達の手に入っていいものだろうか。 バチがあたったりしないか。当然、初級者向けの大きなオールラウンドだったんですが 、「スラローム感覚のボード」なんて書いてあるのも男ゴコロをくすぐりました。そう じゃん。僕達もう素人じゃないんだから、今さらオールラウンドではねぇ、じゃん。（ このへんの「じゃん」の使いかた、合ってるのか？）いきなりスラロームは無理として も、やっぱ「スラローム感覚」じゃん。という感じ。ボードの色もカラフルで派手でい いし（←今から思えばケバくて趣味悪い）、セイルも最新式だ。（←ま、サーファー艇 に比べればね。）よし、思いきって買おう！
店員に
「すいません。これください！」
って、きっぱりと言え！と塩サバ２号をけしかけるも、
「えー、お前言えよー。」
とか言って態度が煮えきらない。安物と言っても９万８０００円。ピン球３個入り のくださぁい、なんて文房具屋のおばちゃんに頼むのと違って、こういうのってけっこ う勇気いりますよねー。９万８０００円のうち、７万円くらいを私が出すということに なっていたので（塩サバ２号は貧乏）、だから頼むのはおっさんが頼め！ということで 塩サバ２号をまるめこみ、ようやく
「すいません、あのう・・・」
という、極めてきっぱりしていない態度で店員を呼び止めることに成功したのであ りました。
　
　とにもかくにも商談は成立。ボードなどの道具一式が我が車に積載される運びと なりました。いやあ、今日はこれからこの素晴らしいボード（と、当時は思っていた） で初ウインドかぁ。気分はいやがうえにもイェーイ、みんな盛り上がってるかーい？
　セイルがなんか嫌ぁな感じの「紫色」だったのが気がかりでしたが（飾ってあっ たのはオレンジ色だった）、まあ安物やし、しゃあないんちゃう。とにかくまあ道具を 全部積み込んで、さあ出発だと思ったその瞬間、私はあるコトに気がつきました。
「ブームがないやん！」
ブームというのはセイルを操作するのに使う、パイプで出来た楕円形の輪っかみた いなものです。これがなかったらあかんやん！あわてて店に戻って半泣きになりながら 店員に実状を切々と訴えました。９万８０００円のセットにブームなんかついとるわけ ないやん！なんて言われたらどうしよう・・・。と思って心配しておりましたが、店員 は明るく
「あ、ブームねっ。忘れてましたぁ。」
と言って倉庫のほうへ走っていきました。ああ、よかった。ブーム、ちゃんとつい てるんだぁ♪
ところが待つこと１０分。店員はいつまでたっても戻ってきません。
「もしかしたらブームというのがどういうものなのかわからず、一人で倉庫で泣い とるんとちゃうかぁ？」
なんて話をしていると、ようやく店員が戻ってきました。そしてきっぱりと言いま した。
「すいません。ブームはありません！」
いやあ、この時ほど奈落の底に突き落とされるような気分になったことはなかった ですね。期待が大きかっただけに余計に。ただ、９万８０００円のセットにブームなん かついとるわけないやん！ということではなく、何日後かに入荷するので追って連絡す る、ということらしい。とにかく本日の初ウインドは諦めねばならない。うなだれて店 を出ようとすると、もう一人の店員が突然、
「あ、アレと違うか！」
　
　結局、店に展示してあった「アレ」がソレだったことが判明。
「そういえばセイルもまだでしたね。」
と言うので確認すると、セイルだと思っていた嫌な紫色の物体はただのセイルの入 れ物であることが判明。さらに
「マストも間違っていましたぁ。」
ということも判明。もうとにかく、いっぺんに色々なことが判明しちゃうのであり ました。（店員、無茶苦茶やん！）
結局、１本物で「まあ、こんなもんか。」と思っていたマストは２ピースの分割で きるタイプに格上げされ、展示してあった「幸せのオレンジ色のセイル」も見事にＧＥ Ｔし、失意のどん底から再び薔薇のハナ咲き乱れるパラダイスへ！いやあ、この時ほど 感情が揺れ動きまくったことは未だかつてなかったです。
　
今週の教訓：店員、しっかりせぇ！
　
ということで、私達が「これください。」と頼んだ時に店員が思わず「やっと売れ たか・・・。」とつぶやいた（気がする）このシロモノ（マストには違う支店のシール が張ってあった。おそらくたらいまわし。）以後、アルペンで見かけることはありませ ん。
　
　さてこの「９万８０００円」の実力やいかに？この話、次回に続きます。ではま た。

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