僕は果物の中では桃がいちばん好きです。果物ではなく、けだものだったらハイエナがいいかな？…という気がするんですが、けだものでなくて果物だったら、やっぱり桃がいちばんいいですね。手のひらにすっぽりと収まる手ごろな大きさと、華やかなピンク色。僕は桃の実を見ると、愛しさのあまり思わず頬擦りしたくなっちゃうんですが、いや、桃の実には細かい毛のようなものが生えているので、頬擦りすると痒くなっちゃうんですけどね。　でも、桃ちゃんのお毛毛だったら別にかぶれてもいいっ！…と思ってしまうほど、僕は熱心な桃ファンであるわけですが、菊池桃子主演の 『パンツの穴』 というのも、実に爽やかな映画でしたしね。いや、僕は見たことがないんですけど。

　そんな可愛い桃の木には、ただ実がなるだけでなくて、お花だってちゃんと咲くというのを知っていましたか？　僕はですね、知っていました。歌にだってありますよね。　灯りをつけましょ、ぼんぼりに　お花をあげましょ、桃の花　五人ばやしの笛太鼓　今日はたのしい、ひな祭り〜　お内裏様と、おひな様　二人ならんで、すまし顔　お嫁にいらしたねえ様に　よく似た官女の白い顔〜　金のびょうぶにうつる灯ひを　かすかにゆする春の風 　すこし白酒めされたか　あかいお顔の右大臣〜　着物をきかえて、帯しめて　今日はわたしも、はれ姿　春のやよいのこのよき日　なによりうれしい、ひな祭り〜♪　…って、いや、歌い始めてすぐに “桃の花” が登場したので、何もわざわざフルコーラス歌い切る必要はなかったんですが、最後まで歌って初めて、この歌の正式名称が 「たのしいひなまつり」 ではなく、 「うれしいひなまつり」 であるという事が判明するんですけど。

　で、３月３日＝桃の節句というイメージから、桃の花というのは３月に咲くものなんだよね。…と思っている人がいるかも知れませんが、それはあくまでも旧暦の話。　今の暦で行くと、４月の上旬ということになろうかと思いますが、桜と同じく桃の花も日本列島の北と南では咲く時期に大きな時間差が生じるので、山梨あたりだとゴールデンウィークの頃がいちばんの見頃ということになりましょうか。　ところで、日本で育てられている桃の木には、食べられる実がなる木と、食べられない実がなる木の２種類があるというのを知っていましたか？　後者のほうは正確に言うと、食べられないことはないんだけど、食べても美味しくない実がなる木…ということになるんですが、どうしてそんな役に立たないものをわざわざ植えるのかというと、実は不味いんだけど、花はとっても綺麗であるという。　顔は可愛いんだけど、性格はめっちゃキツイ。…というギャルと同じように、天はなかなか二物を与えてはくれないようなんですが、お花を観賞する目的で改良された園芸品種の桃のことを “花桃” と呼ぶんだそうです。

　桑名から近いところで言うと、長野県の園原というところに “花桃の里” というのがあるんだそうで、僕は大いにソソられるものを感じてしまいました。何でも花桃というのは１本の木に白と赤とピンクの花が咲くんだそうでありまして、珍しくてよさそうではないか！…と思ってしまったんですよね。園原なら中央道を走って恵那山トンネルを抜けてすぐのところなので、車で２時間くらいの距離だし、 “ハローキティに会えるスキー場” として有名な 「ヘブンスそのはら」 だって近いです。このスキー場はゴールデンウィークと夏休み期間中にもゴンドラやリフトを運行しておりまして、５月であればミズバショウの花だって見られるんだそうで。これはもう、連休中の暇つぶし企画に組み入れるしかありませんな。　…などと考えていた４月のある日、僕はあまりにも暇だったので、いなべ市にある “梅林公園” というところに行ってみることにしました。ここには一度、３月の初旬に梅の写真を撮りに行ったんですが、あまりにも梅の花が咲いてないことに狼狽して、ロウバイの花と梅のつぼみだけを撮影してきたんですよね。　あれから１ヶ月半。公園内はすっかり様変わりしておりました。梅の花はとっくの昔に散り尽くして、ただの葉っぱの生えた木と化しておりました。ただ、駐車場の植え込みにですね、 “花桃” がそこそこの数、咲いていたんですよね。僕の場合、とりあえず写真さえ撮ってしまえばそれでオーケーなので、これで園原くんだりまで行く手間が省けたというものですな。

　で、花桃は噂通り、１本の木に白と赤とピンクの花を咲かせておりました。いなべ市ではなく、安八町のほうの “百梅園” には、白いものやらピンク色、あるいはかなり濃い赤色のものまで、さまざまな色の花を咲かせる梅の木があったんですが、白なら白、赤なら赤と、１本の木に限って言えば咲かせる花の色は決まっておりました。それが花桃の場合は１本で３色ですからね。まるで、植物界の３色モナカアイスのようなと言うか、靴下が白で、ブラが赤、そしてパンツがピンク色といった着こなしのギャルみたいと言うか。そういうセンスは、かなり問題があるのではないか？…という気がしないでもないんですが、桃ちゃんならこれが似合ってしまうんですね。赤とピンクのフリフリ下着♪　いいではありませんか。　桃ちゃんだたらもう、例えパンツに穴があいていても許せてしまう、そんな気分の僕なのでありました。