【タイトル】

いい旅夢気分・桑名編（１）

【所 在 地】

三重県・桑名市他

【アクセス】

　電車の場合は近鉄を利用しましょう。金持ちは特急ですね。名古屋から１６分で す。車の場合は東名阪です。でも本当の旅のプロなら、熱田から舟でくるべきです。

【ガ イ ド】

　前回、「いい旅夢気分・伊勢志摩編」というのを掲載したところ、わりあい好評 でした。「よかった。」というメールが３通ほど届きました。これに味をしめて続編を 書くことにしましょう。題して「いい旅夢気分・桑名編」。実際にこういうテレビ番組 が放送されたわけではなく、もしこの番組が桑名に来たとしたら、こんな感じになるん とちゃうか、と想像して書いてみます。ではＶＴＲスタート！

　海です。海岸線を男と女が歩いています。この手の番組と言えば、男と女ですよ ね。男は５０歳くらい、眼鏡をかけています。そんでコートなんかを着ているわけです 。女のほうはお姉さんと呼ぶのかオバサンと呼ぶのか、微妙なお年頃です。はっきり「 オバサンやん！」と言いきってしまうには若干の戸惑いを覚える、という年代ですね。 海には大きな岩と小さな岩があり、そこにはしめ繩がかけられています。

　「この海は禊ぎの海と言って、昔伊勢神宮にお参りする人はみんなここで身を清 めたんだよね。」

　と男が言います。この男の口ぶりは「僕はなんでも知ってるんだ。そうなんだ。 エラいんだ。ギャラも高いんだ。」といった感じが見受けられます。でも実際はギャラ 安いんです。あんまり売れてない俳優なんかを値切りたおして使っているんです。で、 どこで撮影しているのかと言うと二見浦なんですね。さっきの岩は夫婦岩です。そのう ちにスタッフの一人がある事実に気がついて、愕然として叫ぶわけです。

　「あかんやん！ここ桑名とちゃうやん！」

　そんなわけで撮影は急遽中止。スタッフは自らの不明を恥じながら、あわてて国 道２３号線を走ってきます。高速も走れないような貧乏所帯なんですな。

　気を取り直してオープニング場面の撮影開始。赤須賀の出漁風景なんかがいいで すな。小さな舟がいっせいに揖斐川に出ていくところ。そのうちに一隻の舟が帰ってき ます。乗っている漁師に女が声をかけますね。

　「こんにちはー。ハマグリを取ってらっしゃるんですかぁ？」

　この女は発想が単純やから、桑名と言えばハマグリだと思っているのだ。すると 漁師が答えますな。

　「シジミだがや。」

　どうせ赤須賀の漁師に演技などできないだろうと思ってテレビ局が用意した売れ ないタレントなんですね、これ。漁師顔のおっさんを選りすぐって安いギャラでこき使 ってる。で、桑名というのは名古屋に近いからきっと名古屋弁だろうと勝手に判断して テキトーな方言指導をしてきた。

　「桑名と言えばハマグリだと思いがちだけど、実はヤマトシジミの産地でもある んだ。」

　男がワケ知り顔で言う。

　「でもね。そのシジミの漁獲量も年々減ってるんだ。何故かというと…。」

　男は突然社会派の顔になり、いまいましげに川の上流のほうを見るわけです。こ こで画面には長良川河口堰が写しだされます。

　「そう、長良川河…。」

　「シラウオなんかもとれるんですよねっ！」

　女が突然話題を転換します。もうこのへん、打ち合わせめちゃくちゃ。

　波乱含みのこの番組、まだまだ続きます。

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