【タイトル】
オーストラリアは冬だった（完結編その完直前）
【所 在 地】
南のほう
【アクセス】（前回までのあらすじ）
ゴールドコーストの海岸を歩いて、途中で発見したショッピングセンターに入って 本を買った。
【ガ イ ド】
　ゴールドコーストの海岸を歩いて気がついたこと。
　
１．スイカ割りをしていない。
２．焼きイカを売っていない。
３．とうもろこしもない。
４．大あさりもない。
５．観月ありさもいない。
　
冬だからなのかも知れませんが、あまり海水浴場という感じがしませんね。おお、 海水やん。ムラムラするなぁ。って、それは海水欲情。そんな貴方は海水フェチ。将来 がちょっぴり心配。金髪ビキニギャルもおらんし。いや、金髪でなくてもビキニでなく てもいいんですけどね。どっちかというと女子高生スクール水着ギャルのほうがタイプ だしぃ。そんなあなたはノーマルです。将来になんの心配もありません。えーと、ショ ッピングセンターの話。ガイドブックにも載っている有名なところらしいんですが、ほ とんど日本人は見かけませんでした。本屋で接近遭遇した塩サバ物産（仮名）津営業所 の「浮いた」若手社員くらい。この「空中浮遊」トリオは麻原尊師も真っ青ちゅうぐら い浮いていて、昼からはバンジージャンプするんや、バンジーで現代病を直すんや！な んて言っておりました。浮いてたもんなー、麻原尊師。座禅したまま新宿の高層ビルの 上空を飛んだりしてました。むっちゃ不自然やん！空を飛ぶなら飛ぶで、もっと「らし い」飛びかたちゅうもんがあるやろ！と思いましたが。どうせ空を飛ぶならアニメじゃ なくて実写で飛べ！という気もするし。さて、本屋を後にした私は子供服屋へ入りまし た。塩サバ２号がガキに土産を買ってこい！なんてことをぬかしやがったもんでして。 ２歳と４歳のガキなんてものは２人で１個「ひっつきコアラ」（１豪ドル＝９８円）で も与えておけばいいんですが（贅沢させるとロクな大人になりません。）、Ｔシャツ買 ってこい！なんてことをぬかしやがったもんでして。そういえばコイツ、新婚旅行でヨ ーロッパへ行った時、土産に「わけわからんパルテノン神殿の容器に入った（←むっち ゃ安っぽい）とても飲み物とは思えないような強烈な臭いのする酒のようなもの」（推 定金額９８０円）しか買ってこなっかったのではなかったか。あまりにわけわかんない から捨てたぞ、私ゃ。
　
　ということで子供服屋。私は海外旅行と言えば５年前のハワイと今回のオースト ラリアだけなんですが、その豊富な経験から言うと、ハワイに住んでいる人に比べてオ ーストラリアに住んでいる人のほうがオーストラリア人ですね。で、オーストラリア人 というのは基本的に日本語を解しません。駅前に「ＮＯＶＡ」はないんか！といいたい くらい日本語が通じない。ま、ＮＯＶＡがあったところで英語が上手になるだけだけど ね。それ以上英語がうまくなってどないすんねん！みたいな。んなわけで、話は変わり ますが「鼻毛カッター」というのがありますよね。今、この原稿を書きながらふと机の 上を見たら置いてありました。それを見ているうちにふと思いました。
「これ、耳毛カッターにも使えるんちゃうか？」
で、やってみて、思った。
「やかましいやん！」
　
今週の教訓：鼻毛カッターは耳毛には不向きである。
　
関係ない話でしたね。で、私がこの子供服屋の外人の婆さん柳沢トメ（仮名。推定 年齢１７歳）と交わした会話を日本語に訳すと、だいたいこんな感じになるでしょう。 なんで外人やのにこんなベタな仮名なんやとか、なんで婆さんやのに推定年齢が１７歳 なんやとか、言いたいことはいっぱいあるでしょうが、ここはまあ私の話を聞いてくだ さい。人の意見を聞く。そこから相互理解というものがうまれてくるのです。
　
「何かお探しですか？」
「・・・・・。」
「男の子？女の子？」
「・・・・・。」
「いくつくらい？」
「・・・・・。」
　
会話になってへんやん！いやほら、僕ってシャイな上にサイだしぃ。無口な上に樋 口だしぃ。誰なんだよ樋口。で、つたない英語を駆使して、なんとかトメちゃん１７歳 に「コドモ向けのＴシャツが欲しい。男の子で４歳と２歳。上の子はすぐにゴネる。」 なんていうことを申しいれると、私の言わんとすることを理解したトメちゃんは、いろ いろとピックアップして何枚ものＴシャツ見せてくれるのでありました。はっきり言っ てヒトんちのガキのＴシャツのデザインなんかどうでもいいので、適当に２枚選んで
「これ、トゥ・エイジ？これ、フォー・エイジ？ＯＫ、ＯＫ！」
と言って、さっさと店から脱出したかったんですが、トメちゃん、ちょっとしつこ い。なおもＴシャツをひっぱり出してきては「どーのこーの」とレクチャーしてくださ るではありませんか。暇だったのか、トメちゃん。それとも、俺に惚れたか。悪いな。 俺には妻も子もいないが、アンタはいやだ。だってトメちゃん、推定年齢は１７歳だけ ど、実際はどう見ても６０前後なんだもん。ということで、こんな店に入ってしまった 事を後悔しつつ、なおもしつこく追いすがるトメを松の木の下でケとばして振り払い、 さっさと適当なＴシャツを２枚ひっつかんでレジのところへ急行。するとそこには爺さ んがいて、お金を払ったらオマケとして「ひっつきコアラ」５匹と、むっちゃ安っぽい 子供用の「オーストラリア国旗模様の帽子」（小学生が体育の時間にかぶる赤白帽みた いなもの）をくれました。爺さん、俺に惚れたか。
　
　さて、ちょうどお昼どきで、本日はお日柄もよろしいようで、ついでだから何か 食べていこうと。ショッピングセンター内を偵察すると、出口近くのトイレの近くの、 ちょっぴり暗いムードのコーナーに喫茶店みたいなものがありました。でもなあ、店員 は若い外人の姉ちゃんばっかやし、客も若くない外人のおばちゃんばっかやし、南の島 にはえている植物は椰子やし。「喫茶店に入ると不良になる。」って風紀委員の先生に 注意されたしなぁ。と、しばし戸惑うこと３分半。しかし日本男児たるもの、ここでめ げてはいけません。意を決して店の前を素通りすると、そのままトイレに駆け込みまし た。いやあ、異国の地で１人で食べ物屋に入るのって緊張の夏、日本の夏。って、今は オーストラリアの冬やがな。ばしっ！なんていう、しょうもないことを考えながら（← 人間、心細くなるとつまらんボケに走る、ということはよくありますよね。ま、一種の 現状逃避というか。頭の皮膚ぅ？←それは頭皮。）これから先の人生、いったいどうす ればよいのかという問題について、１人でしばらく悩んでおりました。困ったときには どうすればいいのか。その解決策として、以下の３つの方法がございます。
　
１．ドラえもんを呼ぶ。
２．とりあえず笑う。
３．夏休み科学電話相談に電話する。
　
「はははははははは。」
私はとりあえず笑ってみましたが、何の解決にもなりませんでした。
　
今週の悟り：塩サバに書いてあることには嘘が多い。
　
今頃、気がついたんかい。だいたい私は１人で食堂とかレストランとか同伴喫茶と かに入るのが苦手なタイプなんですよね。どこかに「お一人様、歓迎。」という同伴喫 茶はないものでしょうか。そんなわけで、喫茶店（といっても半オープンエア・タイプ ）の前を行ったり来たりしてたんですが、ついに意を決して店の姉ちゃんの前にすっく と歩を進めました。感じでいうとマクドナルドみたいな、「カウンタでお姉さんに注文 してその場でお金を払い、品物を受け取ってテーブルに持っていって食べる、もしくは テイクアウトする。間違えて相手を殴り倒したりしてはいけません。それはノックアウ トや。」というスタイルの店のようです。と、と、と、とにかく何か注文しなくてはと 、店員のお姉さんの頭の上ぐらいの位置にある「メニュー」に目を凝らしました。それ らのメニューはすべて英語で書かれているので、今ひとつその食べ物の様相が視覚的に ピンとこないのですが、なんとなく「あ、これはきっと野性の七面鳥を温かく挟んだも のだな。」ということが想像できた「ワイルド・ターキー・ホット・サンド」というの を注文しました。ついでに喉もかわいていたから、何か「お飲み物」も注文しちゃおう っと。
　
「アイス・コーヒー、プリーズ。」
「ワイルド・ターキー」という大物をクリアした直後だから、余裕しゃくしゃくで 「プリーズ」なんて言っちゃって、憎いねコノコノ。もう、恐いもの知らずやん。おー 、さすがはジャパニーズ・サムライ！と、自分で自分を褒めながらお金を払い、お釣り なんかもきちんと受け取って、さあこれからどうすんねん。という段階になって、また オドオドしてしまいました。店のお姉さんは鼻歌混じりにガラスケースからチーズやら ハム（これが「ワイルド・ターキー」らしい）やらをつまんでパンの上に乗せたりして 、なにやら長期戦の様相を示しております。これ、出来るまでここでぼーっと指をくわ えたりしながら待っていればいいのであろうか。それとも、テーブルに着席して待っと ればええんやろか。とりあえず「判断がつかない時はぼーっとしてろ。」という山田花 子的教訓に従ってぼーっとしていると、店のお姉さんがジェスチャーで「座って待って いればいいのよっ♪」というような合図。なるほど、とジャパニーズ塩サバは曖昧な笑 顔を浮かべ、近くの席へと着座したのでありました。やがてオーストラリアの国旗を突 き刺した（ガイジンと見てのサービスか？）「ワイルド・ターキー・ホット・サンド」 が到着。それはそれは、ごく普通の「チーズとハムをはさんで焼いたパン」でした。い やまあ、多分そんなもんやろうと思って注文したワケだから、なんの不満もありません が。それにしてもアイスコーヒーはどうしたのだ。まさか忘れられとんのとちゃうやろ な。しかしもし、忘れられとんのだとしても、外人のお姉さんに「ここ、アイスコーヒ ー、忘れとんのとちゃうか！」と文句を言って詰め寄る、というようなことはようせん なー。もしこのまま忘れ去られたとしても、そのまま黙って席を立つということになる んやろな。その場合、日本とオーストラリアの友好関係には少なからぬ影響が生じるこ とになるだろうな。なんてことを考えつつ、黙々と「野性七面鳥」（←家畜の豚のほう がうまいような気がする。）を食べていると、やってきました、念願の「アイスコーヒ ーらしきもの」をお盆の上に乗せた姉ちゃん。ああ、これでひと安心。
　
　ところがその姉ちゃん、なにを思ったのか全然関係ないオバちゃんのほうへ歩み よっていき、「アイスコーヒー？」なんて聞いております。「ちゃう、ちゃう。オバち ゃんちゃう。こっちこっち！」と心の中で叫び声をあげながらコトの顛末を窺っている と、オバちゃんに「ちゃう、ちゃう。わたしちゃう。」と断られたらしいお姉ちゃんは 「おかしいわねー。」なんて感じで小首をかしげているのであります。おかしないって ！こっちやて！
　やがて店の片すみでひっそりと「野性七面鳥温的挟物」を食べている東洋風サバ 男に気がついた姉ちゃんがこっちのほうに歩いて、「アイスコーヒー？」
「イエス、イエス！」
こうして私はようやくアイスコーヒーを手にすることが出来たのですが、なんじゃ こりゃ？私は「冷たいコーヒー」、すなわち「ホットでないほうのコーヒー」という意 味で「アイスコーヒー」を注文したのですが、オーストラリア人の姉ちゃんにはきちん と意志の疎通が出来ていなかったようで。出されたモノは「コーヒー牛乳状の液体の底 部にアイスクリームが沈澱し、さらにその上部に生クリームをのっけてスティック状の チョコレートを突き刺したという、こんなんガキの食いもんやん！」というようなシロ モノでありました。食べてみたら甘いの甘くないの、甘いんか甘くないんかはっきりせ い！と言いたくなるくらい甘くって・・・。こんなもんならオバちゃんにやればよかっ たなぁ。お礼にほっぺにキスぐらいしてくれたかも。うわっ、むっちゃ災難。
　
　野性七面鳥と「アイスコーヒー」（オーストラリアでいうアイスコーヒーという のはこんなものなのか？それとも、日本でいうアイスコーヒーは何か別の言いかたがあ るのか？その真相は依然闇につつまれたままである。）をたいらげると、またしても新 たな疑問がわきおこりました。はたしてこのお盆の上の皿とコップはどうすればいいの か。覆水と親不孝者は盆にかえらないって言うしなぁ。（←野田秀樹が言ってた。）
　
まわりの客の様子をうかがってみると、どうやら自分でカウンタのところへ持って いくシステムのようであります。意を決してお盆をカウンタのところまで持っていき、 無言で立ち去るのもなんだからと思って、勇気をふりしぼって英会話にチャレンジして みました。
「サンキュー。」
するとカウンタの中のお姉さんが笑顔で
「サンキュー♪」
この国に少しだけ打ち解けることができたようなそんな気分になって、暖かな冬の ビーチを再び歩き始めたのでありました。
　
　　　（つづく）
　
　ということで、次回こそ最終回、かな？千石イエ子ちゃん（仮名。本名はセン子 ちゃん。）と感動の再開を果たした話などをお届けいたします。乞うご期待。

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